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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)4537号 判決 1969年6月30日

被告 株式会社協和銀行

理由

一、(省略)

二、《証拠》に徴すると、被告が訴外西村俊雄の父善雄との間に被告主張の日時、その主張の手形貸付、手形割引等の銀行取引契約を結び善雄に対し金二〇〇万円を弁済期同年五月二八日、利息日歩二銭四厘と定めて貸付け、同人から被告主張の手形の振出交付を受けるとともに訴外西村俊雄の連帯保証を得たこと。被告は訴外俊雄に対しては別に不動産に根抵当権を設定していたが、抵当物件の処分手続が煩雑であるので、見返り担保の意味で同人から原告主張の定期預金を受入れ善雄に対する前記貸付金の弁済遅滞の場合にそなえるとともに、債務者が支払を停止したとか、手形を不渡にするなど信用状態に不安を生じ、債権保全のため必要と認められるとき(乙一号証の銀行取引約定書五条一項三号、二項三号)には右貸金債務の期限の利益を喪失せしめることを約したこと。

ところが訴外人らは右貸金の弁済期が来ても弁済できなかつたので被告はやむなく同年七月二七日まで弁済を猶予したが、同年七月一日訴外善雄の振出した手形二通が不渡になり、その信用状況が悪化したため被告は本件貸金についても前記約旨(前記約定書五条一項三号、二項三号)に則り弁済猶予の利益を喪失せしめ同年七月八日までに支払うよう催告し、右催告書は同月四日同訴外人に到達したことが認められ、他に右認定を左右すべき立証はなく、右催告につき相当の期間を必要とすべき理由はない。

そうだとすれば原告主張の債権差押、転付命令は、被告主張の自働債権の弁済期が同年七月八日と確定した後である同年七月一二日に被告に送達されたもので、その当時既に本件定期預金債権と右貸金連帯保証債権は互に相殺適状にあつたことになるから、被告は右差押、転付命令送達後であつても右相殺を以て原告に対抗する権利を奪われるものではなく、被告が昭和四三年七月一九日原告に到達した書面を以て訴外西村俊雄に対する前記連帯保証債権と対当額において相殺した意思表示(成立に争いのない《証拠》によつて認める)によつて被告の本件定期預金債務は消滅したものというべく、右債務の存続を前提とする原告の本訴請求はその余の判断をするまでもなく失当であり、被告の相殺の抗弁が法の潜脱であるとは到底考える余地はない。

よつて原告の本訴請求を棄却

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